Road to
Sapporo University of Arts

ART

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vol.1

北海道という「風土」が、 独自のクリエイティビティを生む。

ないからつくろう、札幌のアートシーン

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本郷新記念札幌彫刻美術館 館長

吉崎 元章

1962年北海道苫前町生まれ。北海道教育大学札幌分校特設美術課程卒。1986年から札幌芸術の森に勤務。1990年開館の札幌芸術の森美術館に準備期から学芸員として関わり、2008年から副館長。札幌の画家や彫刻家の回顧展、札幌の美術の歴史や現状を紹介する展覧会を多く手がける。2018年から札幌文化芸術交流センター SCARTS プログラムディレクターを経て、2021年から現職。国際美術評論家連盟会員。

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美術学科 教授

平向 功一

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美術学科 講師

吉田 潤

吉崎

まず、北海道・札幌という場所が持つポテンシャルについて掘り下げてみたいと思います。私は長年、美術館の学芸員としてこの地の美術を見てきましたが、ここは日本の中でも特殊な「磁場」を持っています。 歴史や気候・植生も違えば、何より冬の景色が違う。雪が降った翌朝の、あの突き抜けるような青空と雪のコントラストの美しさは、ここで暮らす人々の美意識に深く刻まれています。

平向

その環境特性や地域性は、素材への向き合い方にも表れます。例えば、北海道ならではの「エゾシカ」から膠(にかわ)を作る研究など、この土地にあるものをどう表現に取り込むかという視点は、学生たちの発想を豊かにしています。 また、本学の大きな特徴は、そうした実験を「領域を超えて」行えることです。

吉田

そうですね。私が指導した学生の中に、版画専攻でありながら、自分の足を石膏で型取りして立体作品を作った子がいました。「版画」と聞くと平面の紙をイメージしますが、その学生は「指紋」のような痕跡を残すという版画の本質を、立体物に置き換えて表現しようとしたのです。 こうしたジャンルを横断したミクストメディア(複合媒体)的なアプローチが自然に生まれるのが、本学の面白さです。

吉崎

それは素晴らしい。自分の思いを形にするために伝統的な形式にとらわれず、版画の解釈を深めて手法自体も問い直す。まさに「フロンティア精神」ですね。 それともう一つ、面白い視点があります。「なぜ北海道出身の漫画家はこれほど多いのか」という話です。

平向

気になりますね。なぜでしょうか。

吉崎

評論家のある方は「あえて乱暴な言い方をすると、北海道が貧しい土地であり、マンガ自体が貧しい文化だったからだ」と逆説的に述べています。かつて、優れた美術館やコンサートホールが少ない地方では、本物のアートに触れる機会は限られていました。しかし、漫画雑誌は全国どこでも手に入り、投稿システムを使えばどこに住んでいてもデビューのチャンスがあった。つまり、マンガだけは質の高いものに接する事も、学び、発表することも、北海道にいる事がハンディではなかったのです。またそれだけ北海道は創造的な独自の感性を育んでいる土地だと言えると思います。

平向

面白いですね。現代で言えば、SNSがその役割を果たしています。 日本画の卒業制作がSNSで火がつき、世界中から注目されました。もはや東京を経由して評価を得る必要はない。SNSというツールと、北海道という独自の制作環境があれば、ここから世界へ直接アクセスできる時代です。

吉崎

そうですね。北海道の広大な自然のように、学生たちの発想もボーダーレスになっています。

吉田

国松希根太さんや高橋喜代史さんのように、札幌を拠点にしながら全国的に活躍する作家も増えています。中央の流行を追うのではなく、この地の風土と向き合い、自分自身の表現を掘り下げる。そうした「自律したアート」を学べる環境が、ここにはあります。

撮影場所:本郷新記念札幌彫刻美術館
*vol.2は近日公開予定です。

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